JSダイアリーが誕生するまで 和気文具取材日記

こんにちは、和気文具代表の岸井です。
今回は皆様にご愛顧いただいてるJSダイアリーがどのようにして皆様の手元に到着しているのか、
ご案内しようと思います。

▼DAY1

2022年10月18日、前日までの札幌出張を終えて、僕は空路で仙台に入りました。
初めて降り立つ東北の地、今まで北関東以北、北海道・青森の間にある東北地域には縁がなく
立ち寄る機会はありませんでしたから、東北のど真ん中に初上陸です。

JSダイアリーがまだ枻出版社様のブランドであったESダイアリー時代に、
この東北の地を生産地に選んでくれていなければ東北に立ち寄る事は随分先になっていたでしょう。
機会を与えられた事に感謝です。

空港から仙台駅まで移動すると、印刷会社の方お2人が僕を温かく迎えてくれた。

「岸井さんようこそ仙台へ」

実はこの時点で飛行機が遅れて、予定の電車に乗れなかったので僕は30分以上遅刻していた、、、

「早速ですけども製本工場へご案内します」

初仙台をゆっくり見る事もなく、急ぎタクシーで工場へ向かった。
仙台駅から約20分、意外と中心部から離れていない場所にその工場はあった。

今回の訪問は2日間にわたっている。
初日は製本工場で、JSダイアリーをくみ上げていく工程を勉強させていただく。
翌日は岩手の盛岡へ新幹線で移動し、組み上げ前の段階である印刷の行程を見学する予定だ。

「遠くからありがとうございます」

製本工場の社長さんが直々にお出迎えだ。

この出張予定、実は約1週間前に突如決まった予定であり、アテンドして下さる方と
訪問先の方々に相当無理を言って実現していて、とっても恐縮な出張だということを伝えておきたい、、

(もっと余裕をみて予定を組めばいいじゃないか)

確かに皆さんの思う通りなんですが、並行して出てきたスケジュールがあり、
それは何かというとJSダイアリーをこれから使っていただく未来のユーザーの皆様と、
すでにお使いのユーザーの皆様にご利用いただく予定の、「JSダイアリーブランドサイト」を
立ち上げるという、大切な予定がすでに進行していたのです。

そちらのサイト内では、JSダイアリーの背景であるこの生産工程をご紹介しておくことはマストでありながら、
急遽コンテンツ不足であることから取材を申し込んだという流れになっている。

「時間も限られてますので早速」

この工場に到着したのが14:30、3時間後には仙台駅から盛岡に向かう新幹線に乗らなければいけない。
集中してすべての行程を見逃さないように気を入れて工場内に入った。

▼「製本第1工程」- 折加工

実際は翌日に見学する印刷工程が先になるのだが、印刷された大きな一枚の紙がどのように製本されるのか。
JSダイアリーユーザーの皆さんは手元に実物があればご覧いただきたいのだが、
例えばA5サイズであればもちろん見開いた時の片側はA5サイズだ。
しかし、1枚ずつのA5の紙を束ねて手帳が出来上がっているわけではない。
よく見たら反対側に対になって続いてるページがあるはずだ。
要は、大きな1枚の紙が折られて複数のページになっている。

この工程では、寸分の狂いなく折り合わせたページがずれない様に折って加工する行程なのである。
ここが悪いと、もちろん後ろの行程にも響くので大切な工程である。

細い罫線が、対になってるページと合わせた時に寸分たがわずにぴったりと合うというのは、
普段手帳を使っていても気にも留めない当たり前の事のように使用しているが、
少しのずれも許されない、非常に繊細な工程だと想像していただけると思います。

▼「製本第2工程」- 丁合

この工程では、前工程でおられた紙を実際に重ね合わせていく作業になります。
無地、横罫、方眼のように、どのページも他のページと変わらない内容でしたら
順番を間違えても問題はありませんが、手帳、ダイアリーのように日付が入った
内容の違うページを合わせ間違えると大変ですからね。大切な工程です。

▼「製本第3工程」- 糸かがり


次はJSダイアリーの命もいうべき、「糸かがり製本」の行程です。
ご覧のように何種類もの糸がセットされた機械に、前工程で丁合された手帳の束が
機械に通されていき、糸で縫い合わせていく工程です。
この部分には印刷会社のノウハウが沢山詰まっており、糸の種類や合わせ方で
手帳がフラットにひらくようになるかどうかの非常にこれも大切な工程となります。

▼「製本第4工程」- 糊付け


次に、糸かがり製本でとじられた背表紙に、補強を施していきます。
補強には、「寒冷紗」(かんれいしゃ)と呼ばれる材料を使用しています。
これは園芸用などても幅広く使われる材料ですが、手帳には補強材として使用いたします。


多少の伸縮性と、通気性があるので、何度も閉じたり開いたりする手帳の背表紙には、
最適な材料といえます。寒冷紗を貼り合わせて、糊付けして背を固める行程です。

▼「製本第5工程」- 乾燥焼き切り、背固め、裏打ち


次に、糊付けされた背表紙を乾燥する同時に、「糸かがり製本」で通された糸の少し
ひげが出ている部分を同時に焼き切って、キレイに背表紙の面を整えていきます。

▼「製本第9工程」- しおり紐づけ

JSダイアリーには2本のしおり紐がついておりますが、これは最終工程で取り付けられてます。
ご覧のような機械に手帳を通して、元は1本の長い紐が切断されて、背表紙部分に合体して
取り付けられていきます。

以上のすべての工程を通って、ようやく1冊の手帳の中身であるリフィル部分が完成するんです。
どの固定にも職人さんが目を光らせており、不良品がでないように確認しているのが
見学させていただいてとても印象的でした。沢山の職人さんの手によって、JSダイアリーは
ESダイアリー時代と変わらない品質を保っています。

大人になっても、いや、大人になったから社会見学で工場に行くのは本当に楽しい。
知らない事、初めて見るものがいっぱいだ。
工場で働いる方は日々の当たり前の事なんだろうけども、完成品を販売している
文房具店の私にとっては驚きの事ばかりだった。

これは、明日の印刷工場も相当に楽しくなるに違いない、、、
そう思いつつ、仙台を後にし岩手県盛岡へ向かった。

▼DAY2

寒い朝。
10月だというのにもうこんなに寒いのか、、、東北に来たなって感じ。
盛岡の繁華街にあるスタバの前でコーヒー片手に立っていると、
印刷工場の社員さんが迎えにきてくださって、早速印刷工場へ向かった。

前述したが、本来は製本の行程よりも、この印刷の行程が先である。
今回は移動の兼ね合いで見学の順番が逆になっている。

▼第一工程 JSダイアリー専用紙 「OKシュークリーム紙」について

製本行程で一番の売りは「フラットに開く糸かがり製本」であったが、
JSダイアリーのもう一つの特徴は目にやさしく裏抜けの少ないOKシュークリームという専用紙を
材料に選択していることだ。これは、JSダイアリーのためだけに王子製紙様が抄造してくださっている。

実は、ESダイアリーから、JSダイアリーに変わる際に、この紙は製紙会社様から「廃盤にする」
と伝えられていた。紙を抄造するのは、想像より大変な事で、簡単に代替品の紙は手に入らない。

長年ESダイアリー時代からご利用いただいてる方は、この紙が好きだから継続して購入して
下さっている方も多いため、簡単にあきらめるわけにはいかなかった。
なんとか交渉してこのOKシュークリームという紙は残っている事もお伝えしておきたい。

▼毎年変わる暦の印刷データを作成する

当たり前のように、新年度版の手帳の暦は更新されているけども、誰がこの複雑な
間違いがあってはならない工程をやってくださっているか。
毎年、日付と曜日は必ず変更があるけども、大量の印刷の元になるこのデータを、
まさか人が1文字ずつ入力しているのか?

実は、JSダイアリーでは、この工程を完全にシステムによって自動化している。
暦とパターンを指定して、後はボタンを押すだけで、翌年度の日付に自動で置換されて
印刷データが出来上がるという、驚きのシステムが導入されている。
企業秘密も多いようで、あまりこの工程に関して詳しくはお伝えできないんですが、
まぁ本当によくできたシステムです。。すごい。。しか言えませんでした。

▼印刷データを元に印刷に使う版を作成する

この大きな緑色の板に、印刷データを焼いて、印刷機にセットする版を作成する。
印刷は1色につき1版を使用するため、4色では1ページにつき4版も必要になる。
JSダイアリーで使われているページ数の分、この版が複数必要なので、ご想像いただけると思うが
沢山の版が必要になり、ここも大変手間のかかる行程である。

▼印刷する

ご覧の象さん何頭分もあるような大きな印刷機で実際に印刷をしていく工程。
「ただ機械に通すだけでしょ?」と僕も最初はそれぐらいに思っていたんですが、
紙は気温や湿度で伸び縮みする材料で、同じ設定で印刷をしても
環境によって印刷結果が変化したりします。
オペレーターである職人さんは、その人間の目と、機械の判断で誤差の無い印刷を監視してました。

室内の湿度も一定であるように、なんと天井からは防犯カメラと思ってた機械から、
常に加湿するためのミストが噴射されておりました。


印刷機械のレーンにはカメラが搭載されており、1枚ずつ撮影をして、見本と瞬時に照合されて
エラーのある紙ははじかれる仕組みになっております。すごい品質管理、、、

以上、行程自体は製本よりも少ない印刷工程ですが、ここにも職人さんの目が至る所に
光っているのと、機械とシステムによる品質管理が徹底されていたのが印象的でした。

こうして出来上がった印刷物は、前日に見学した製本工場に送られて、
皆様のお使いになってる製品へと完成されていきます。

▼最後に

いかがだったでしょうか。

皆さんがお使いいただいてる手帳ダイアリーが、この東北の地で生まれて、
どのような工程で全国へ届けられているか理解が深まった事と思います。

ご自分の手帳のルーツが見えると、また少し愛着が増したのではないでしょうか。
私はもちろん自社の製品ですので、とっても勉強になりましたし、何より嬉しかったです。

まさか、こんなにも沢山の職人さんが関わっていたなんて想像していませんでしたし、
もっと機械的にオートメーション化された工場で印刷されてると思ってました。
ここまでしっかりした品質管理は、さすがに日本企業の製品だなと。

和気文具では海外製品も扱いますが、やはり落丁などのミスがある製品が一定数発見されます。
JSダイアリーについては、ESダイアリー時代からそのようなトラブルは皆無です。

海外製品は文字が曲がってたり、印刷面が合ってなかったり、
使って下さるユーザーさんもそれをわかっている方もいて、「これが味だ」という方もいます。
本国のメーカーさんに質問しても、「許容範囲内だ」という回答もあったり笑

JSダイアリーについては、間違いなく最高水準の環境で生み出されていることがこの目で
確認する事ができて本当に有意義な見学でした。

この場をお借りして、JSダイアリーに携わって下さっているすべての皆様に感謝いたします。
いつも最高の手帳ダイアリーを生産してくれて本当にありがとうございます。
また突然の訪問にも関わらず、お時間を割いて工場を案内して下さった事お礼申し上げます。

JSダイアリーをすでにご愛用下さってる皆さん、
これからこのコンテンツを見て購入を検討して下さってる皆さん、

皆さんがJSダイアリーをお買い物して下さった後に、「自分の選択は間違いじゃなかった」と
お買い物の体験を肯定できて満足で終われる事を、私たちはもちろん生産者も望んでおります。

どうぞこれからもJSダイアリーをよろしくお願いいたします。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。