文房具の箔押し名入れ物語

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今なら当たり前の鉛筆のネーム入れですが、
昭和30年代の初めにそれを持って、小さな田舎町の小学校へ通っていた子が居た。

何を隠そうこの私です。
それは、遥か500キロも離れた大阪から届けられた。

入学のお祝いに父が取り寄せプレゼントしてくれた物でした。

当時の時代背景の中で、それがどれ程のものだったかお察し願いたい。

はやる心は隠しようもなく、自慢げにクラスのみんなに、みせびらかした。

文具屋に産まれた事を、この時ほど喜ばしく思った事はない。

感謝!
そう、感謝で終わればめでたしメデタシだが、そうは問屋がおろさない。

その大阪への憧れを強く持った私は成人すると同時に上阪し、
あれほど毛嫌いしていた文具屋のボンと恋に落ちた。

そして運命の幕が上がる。

嫁いで目にしたそれは、かって自慢げにしていた鉛筆ネーム入れ手動の箔押し機。

へぇー!
これがあれ!
感心するのも束の間、
以後30年余り衣食住を共にするハメになった。

新学期ともなれば、
ネームのオーダーにがんじがらめにされ、徹夜仕事は連日連夜。

日中は店頭に座り続け、ひたすらネーム入れに明け暮れた。

活字を1つ1つ拾いセットするそれは、
熱の入り具合でネームが歪んだり、ハンドルの押し加減でネームが壊れる。
1本1本入れて行く作業は気が遠くなった。

溜息交じりの数年が過ぎ年々要領も掴め始めた頃、時代の波に乗りネットデビュー。

鉛筆が追いかけて来る夢まで見る始末。

そんなアナログな時代話をする機会もなく時は過ぎ、なんと今じゃ1ダースごとにボタン1つで簡単ネーム入れ。

なんてこっちゃです。

レーザー加工機なるモノで、革製品からあらゆる文具に至る迄のネーム入れが可能となった。

我がネームの入った品々は、いつの世にあっても小さな感動を呼ぶ。

大勢の方に愛されるネーム入れの商品は、ネットでは定着しておりますが、実店舗でも受けたまっております。

ご来店の折には、
それらも含め
懐かしのネーム入れ、
手動の箔押し機をご覧頂ければと思います。

 

 

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